今年の月一企画は経済学者の中谷巌氏主催の「不識塾」の課題図書を読んで感想文を書くこと。

  

今月は「課題図書」ではないけれど「 不識塾が選んだ「資本主義以後」を生きるための教養書」で紹介されている1冊を選んでみた。

  

自由と民主主義をもうやめる (幻冬舎新書)

自由と民主主義をもうやめる (幻冬舎新書)

  • 作者: 佐伯啓思
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2008/11
  • メディア: 新書
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「善の研究」「文明の衝突」という歯応えのある(あり過ぎ?^^;)2冊を読んだ後の新書は思わず「え?」と声が出るほど読み易く、さらさらと頭に入ってきた。


しかも面白い!


「自由と民主主義をもうやめる」という何とも刺激的なタイトルの本の始めは左翼や保守、保守主義と進歩主義といった言葉の概念と移り変わりについてわかりやすく説明がなされる。


冷戦時代の図式、左翼=社会主義、保守=自由主義・資本主義、左翼=ソ連、中国、保守=アメリカ、そのシンパが冷戦後には非常に複雑化し、わかりづらくなった。


筆者はこう解説する。


「左翼」は、人間の理性の万能を信じている。人間の理性能力によって、この社会を合理的に、人々が自由になるように作り直してゆくことができる。しかも、歴史はその方向に進歩している、と考える。

一方「保守」とは、人間の理性能力には限界があると考える。人間は過度に合理的であろうとすると、むしろ予期できない誤りを犯すものである。したがって、過去の経験やら非合理的なものの中にある知恵を大切にし、急激な社会変化を避けよう、と考える。

これが、本来的な意味での「左翼・進歩主義」と「保守主義」の対立です。社会主義か、あるいは、親米か反米か、といったこととは関係がありません。


その後、自由は普遍の価値ではない、民主主義は本質的に欺瞞であるという過激な主張がなされたかと思うと「近代(=進歩)を警戒するヨーロッパ」と題して欧州の人たちが古いものや伝統的なものをいかに守るか、それぞれの時代に合わせてどううまく活かすかに如何に腐心しているかが語られ、歴史的なものの中にある知恵を大切にしようとする本来の意味の「保守」の大切さが強調される。


時代の移り変わりと進歩主義の帰結としてニヒリズムの危険性が提起され、文明の高度化によって生きがいが喪失させられる仕組みが明らかにされる。


現代はそのニヒリズムとの戦いであり、世界の各国がどう抗っているかが歴史的社会学的な見地から考察が加えられる。イスラムのテロ活動もアメリカでのキリスト教の復興もその一部であるとのこと。日本におけるニヒリズムは元来ある「無」や「空」に通じ、必ずしも破壊的な方向性を持っているものではないという指摘には思わず息を飲んだ。(それがあの難解だった「善の研究」の西田哲学と繋がった時に!)


そして、そこから日本や日本的価値について漂流してきた歴史や価値観について語られる。


今後、より不透明感が増す世界は資源や食糧を巡って帝国主義の時代が再現されるという予言。「緩やかな戦争」は既に始まっているという指摘、そんな世界でどうこの国が生き残っていくのか、何をもって日本人は世界と対峙していくのか。


筆者は国力には主に4つの力(政治力、軍事力、経済力、文化、価値の力)があり、「文化、価値の力」こそが日本の強みであり、グローバル化により情報や資本の動きが国境を越え、世界に広がり易くなっているこの時代に日本が誇るべき強みであり、自信を持って発信、発揮すべき力であると述べている。そ 


自由を極端に主張しない。自然権としての平等や人権ということも声高には主張しない。欲望の気ままな解放も主張しないし、競争というものも節度を持った枠内でしか認めない。これが日本的精神です。
調和を求め、節度を求め、自己を抑制することを知り、他人に配慮する。これを、今の世の中で実践するのは非常に難しいことです。
しかし、これら日本的な精神に基づいた価値観を打ち出していく以外に、われわれの取るべき道はありません。それは間違いない。


この時代、「アメリカ的なもの」への無意識レベルの精神的従属から脱却するべき時に来ていると言ってもいいかもしれない。


そして、その考察を深めるために避けては通れないのが「あの戦争」であり、その歴史観。


「悔恨の共同体」か「負い目の共同体」か

ここまでの話をまとめると、「戦後」に対しては、二つの見方があるということです。
一つは丸山さんのような、公式的な戦後民主主義、平和主義の立場からの見方。あの間違った戦争を食い止めることができなかったという「悔恨の共同体」が、戦後日本の共通了解であるという考え方です。左翼的な考え方と言っていい。
もう一つは、吉田満に示されるように、あの戦争がよかったのか悪かったのかはともかくとして、そこで死んでいった若者たちに、われわれは非常に多くの何かを負っている、という「負い目の共同体」という考え方です。
それは今さらどうしようもない。しかし、戦後日本の繁栄を見るときに、手放しでそれを享受するのではなく、彼らの死に値するだけのものをつくり上げているのかどうかという自問自答がなければならない。こういう見方です。
私自身は明らかに後者のほうに立ちたい。丸山さん的な「悔恨の共同体」は、あまり意味のあるものだとは思えません。


この数年で不安定さを増してきた世界情勢がここ数ヶ月で急にきな臭くなってきた。

 

この本で知ったこと、学んだことは 個人として日々の行動とは直接関係はない。しかし、空気のように当たり前に思ってきた自由や民主主義、日米関係が当たり前のことではないことに改めて気づかされた。その衝撃は小さくない。


学びを続けていきたいという欲求は確実に高まっている。



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